え?中身がない家って、どういうこと?ファサードって何のこと?
行ってきましたよ。場所はロンドン中心のハイドパーク近くです。まずは、その家の正面(facade)をご覧ください。
何の変哲のない高級住宅地のようですね。
樹木の間に挟まれた建物の正面(ファサード)を見てください。玄関と窓が他の家と違っているのが分かりましたか?
そう、周りの家と同じ形になっていますが、玄関や窓は描いたもので本物ではありません。
ファサードの玄関はもちろん偽物、開けられません。
では、ファサードの後ろはどうなっているのでしょうか?
次の動画をご覧ください。
わかりましたか?
ファサードの玄関と窓などは装飾されたもので、実際はその中身は、ないのです!張りぼてなのです。
この動画で分かるように、ファサードの裏側は空間になっていて、隣り同士を結んでいるのは数本の鉄骨だけです。
ではこの空間はどのようになっているのでしょうか?残念ながらそれを撮影することができなかったので、写真をお借りしてみました。(下の写真をご覧ください)

ここは、ハイドパーク近くの、レンスター・ガーデンズ23番地と24番地にあるファサードと呼ばれる、偽の家なのです。
ファサードとは
ファサードとは、一般に建物の正面部分または外観のことです。なんとこれはフランス語のファサード([fasad]と発音)からきている言葉で、基本的には「間口」または「顔」を意味します。英語ではないんですね。だから発音がしにくいと思いましたよ。
レンスター・ガーデンのファサードは、建物の顔だけをつくったのであり、中は空っぽなのです。
このファサードは近隣の建物に合うように建てられたもので、正面の壁には軽く突き出たポーチ、バルコニー、上層階のサッシ窓、溝付きの半円形の輪郭のコリント風の柱に挟まれた窓、ペディメントされた高い窓、個々の手すりのバルコニーを備えた白いリードなどが備わっています。
ファサードだけなら見た目は周りに溶け合って何も変わった風には見えません。
なぜ、中身がない家になったのか
まずは、このファサードがロンドン交通局によって管理されていることを知っておくといいでしょう。
この建物は、これは1860年代後半に、当時使われていた蒸気機関車牽引式のメトロポリタン鉄道が屋外に蓄積した煙と結露を排出できるように22番地から25番地をぶち抜いて作られたものでした。
電化前、ロンドンでは蒸気機関車が使われていたわけですが、機関車には、石炭を燃やした際に出る煙を減らすために凝縮器が装備されていました。
運転手は、屋外のどこかで蓄積された煙と結露を排出する必要があったわけです。したがって、地下を走っている蒸気機関車の煙と結露を外に開けた空間で開放するための「空気抜き」が必要だったのです。
この地区は上流階級向けだったため、メトロポリタン鉄道は住民に換気口が見えないような工夫を施しました。それが、このファサードなのです。
この見せかけのファサードは、有名なテラスハウスに沿って全く違和感のない外観となっています。さすが、イギリス!
ファサードは5フィート (1.5 m)の厚みがあり、その後ろでは本来の1階に当たる部分に、線路の上に開けた穴があり、今でも地下鉄が走るのを見ることができます。
ファサードには灰色に塗られた18の窓があるほか、もちろん正面のドアには郵便受けも設置されていません。
ドラマでも使用されていた

このファサードはBBCのテレビシリーズ「シャーロック」で一役買っており、エピソード「彼の最後の誓い」でシャーロックとメアリーが対峙する場面で使用されています。イギリス在住であれば、ときどきBBCiplayerで見ることができるかもしれません。
ファサードのほかの用い方。
さて、ここでファサードの建築上の意味を紹介しましたが、この家でもお分かりのように、ファサードには日常会話での次の意味もあるので、使ってみたいと思います。(むやみに使うと嫌われます。笑)
実態より、立派に見せかけていることから、「見かけだおし」「張りぼて」「いうほど大したことないじゃん」となりますね。
このブログのことか!ざんねん!中身が伴うように頑張りまーす。